受注管理は、エクセルに搭載されている機能や関数を活用することで、専用ツールがなくても対応できます。ただし、エクセルならではの注意点もあるため、運用にあたっては具体的な方法やポイントを把握しておくことが重要です。


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本記事では、エクセルで受注管理を行う方法やメリットを解説します。効率的に受注管理を行うポイントや注意点、デメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
エクセルで受注管理はできる?
受注管理は、エクセルに搭載されている機能や関数を活用することで、専用ツールがなくても対応できます。
受注管理とは、取引先からの注文内容を確認し、在庫状況を把握するなど、注文に関する一連の業務を行うことです。主な業務には、見積もり作成や注文内容の確認、納期管理、支払い管理、顧客管理などが含まれます。
エクセルを活用すると、受注に関する一連の業務を効率的に行えるようになります。
エクセルを使った受注管理表の作り方
ここでは、エクセルで受注管理表を作成する流れを紹介します。
- 必要な項目を設定する
- 関数を入力する
- テーブル書式を設定する
- 明確な運用ルールを定める
1. 必要な項目を設定する
受注管理表を作成する際は、まず必要な項目を設定します。
項目の例は次の通りです。
- 注文番号
- 顧客名・取引先名
- 連絡先
- 担当部署名
- 担当者名
- 商品名
- 商品コード
- JANコード
- 数量
- 単価
- 金額
- 受注日
- 発注日
- 発注先
- 入荷日
- 納期
- 進捗状況
最初は、自社の受注管理に最低限必要な項目のみに絞ると良いでしょう。項目が多すぎると管理が煩雑になり、表も見づらくなるためです。項目を精査しておくことで、受注の状況が整理しやすくなります。必要な項目を選んだら、それらを横軸に設定します。
2. 関数を入力する
項目を設定して表の枠組みができたら、関数を使ってデータの集計・入力を自動化します。手入力を行う箇所を最小限にすることで、ヒューマンエラーの防止につながります。
例えば、受注額を算出したいケースを考えてみましょう。まずは、数量と単価をかけ合わせて、自動でそれぞれの商品の受注額を計算します。その合計額に対して、SUM関数を使用することで、全体の受注額の算出が可能です。
受注管理に必要な関数については、関数を使って効率化するをご覧ください。
3. テーブル書式を設定する
テーブル書式とは、データの書式設定が自動化され、フィルタリングや並べ替え、データの集計をスムーズに行うことができる機能のことです。
例えば、表にデータを追加した場合、関数の範囲指定も変更する必要がありますが、テーブル書式が設定されていると、関数も自動で更新されます。
テーブル書式は、次の流れで設定します。
- データ範囲を選択
- [ホーム]→[テーブルとして書式設定]をクリック
- 任意のデザインを選択する
4. 明確な運用ルールを定める
エクセルで受注管理を行う際は、明確な運用ルールを定めておくことも重要です。
更新の担当者が複数名いる場合も、一貫性を保ってデータ入力や管理作業を進めることができ、ヒューマンエラーやデータの破損などの防止に役立ちます。引き継ぎを行う際もスムーズに進むでしょう。
運用ルールの例は、次の通りです。
- 複数人で同時に作業しない
- 関数の設定などの重要な箇所を変更できるのは管理者のみとする
- 情報更新のタイミングと担当者を決める
- 使用時間と入力者を記載する
エクセルで受注管理を行うメリット
エクセルで受注管理を行うメリットは、次の通りです。
- コストを抑えて導入・運用できる
- 柔軟にカスタマイズできる
- データの出力形式が選べる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
コストを抑えて導入・運用できる
エクセルで受注管理を行う最大のメリットは、コストを抑えて導入・運用できることです。
受注管理システムを導入する際は、初期費用や月額費用がかかりますが、エクセルをすでに導入済みの企業の場合は、初期費用が発生しません。
また、エクセルは操作方法に慣れている人も多いので、新たな教育コストがかからないのもメリットです。
柔軟にカスタマイズできる
エクセルのカスタマイズ性の高さもメリットのひとつです。実際の受注状況や業務フローに合わせて、必要な項目や機能を自由に設定・変更できます。
例えば、納期が近い注文のセルは黄色に、納期が過ぎてしまっているものは赤色で強調表示するなど、迅速に対応しなければならない受注内容を目立たせることが可能です。
また、マクロ機能の活用により、反復的な作業を自動化し、入力ミスやエラーを減らす工夫もできます。マクロ機能の使い方や作成例は、次の記事で詳しく解説しています。
データの出力形式が選べる
エクセルは、「XLSXファイル」「CSVファイル」「PDFファイル」など、データの出力形式が目的に合わせて選択できます。
「CSVファイル」は、外部システムにデータをインポートしたい場合に便利です。
エクセルで効率的に受注管理を行うポイント
エクセルで効率的に受注管理を行うためのポイントは、次の通りです。
- テンプレートを活用する
- 関数を使って効率化する
- 入力ミスを防ぐ工夫をする
- 視覚的に状況を理解しやすくする
それぞれのポイントを詳しく解説しますので、運用する際の参考にしてください。
テンプレートを活用する
受注管理表は、テンプレートを活用すると簡単に作成できます。インターネット上で無料のテンプレートが数多く公開されていますので、自社の業務内容にマッチしたものを選んでみましょう。
業務内容に合わせてテンプレートの項目を追加・修正すると、より使いやすくなります。
関数を使って効率化する
エクセルの関数を活用することも、エクセルで効率的に受注管理を行う際のポイントです。集計や表示をできるだけ自動化して、手入力が必要な箇所を最小限にすることで、ヒューマンエラーの防止や工数の削減につながります。
受注管理に活用できる関数には、次のようなものがあります。
- SUM関数:数値を合計する
- IF関数:条件を満たす場合とそうでない場合で、異なる結果を返す
- SUMIF関数:指定した検索条件に合致するセルの数値を合計する
- IFERROR関数:数式や計算でエラーが発生した場合に、あらかじめ指定した値を設定する
- COUNTIF関数:指定した範囲の中で、条件を満たすセルの数をカウントする
- AVERAGE関数:平均値を計算する
- MAX関数・MIN関数:数値の最大値・最小値を返す
- LOOKUP関数:指定した範囲を検索し、値そのものや近い値を探す
- ROUND関数:数値を指定した桁数で四捨五入する
- RANK関数:数値の大きさに応じて順位を付ける
例えば、LOOKUP関数を使うと、取引先コードに応じて取引先名を自動で反映させることが可能です。関数の具体的な設定方法については、次の記事で詳しく解説しています。
ヒューマンエラーを防ぐ工夫をする
エクセルの受注管理表は、基本的な知識があれば簡単に入力できますが、入力ミスや誤操作といったヒューマンエラーが起きやすいのがデメリットです。
間違ったデータが上書きされたり、エクセルの操作方法に慣れていない人が、誤ってデータやファイルを削除したりすることも考えられます。
エクセルの機能を活用して、表を見やすく、かつ入力しやすくすることで、ヒューマンエラーを削減できます。
例えば、次のような機能が便利です。
- フォーム:1行分のデータをカード形式で見やすく表示した状態で入力する
- ウィンドウ枠の固定:画面をスクロールしても特定の行・列を表示させたままにする
- データの入力規則:プルダウンを設定したり、規定外のデータが入力されたときに警告を表示したりする
- セルの保護:特定のセルを編集できないようにする
視覚的に状況を理解しやすくする
受注のステータスが一目でわかるようにしておくと、使いやすい表になります。
例えば、「条件付き書式」の機能で特定の条件を満たしたセルに対して自動的に色付けやフォント変更をすると、データの視認性が向上し、重要な情報をビジュアル的に理解できるでしょう。
受注管理表では、次のような設定を行うと便利です。
- 納期を超過している注文のセルの文字を太字にする
- 支払いが未完了の注文のセルを黄色に変える
- 在庫が少ない商品のセルの色を赤色に変える
適用したい範囲を選択し、「条件付き書式」からルールを設定すると適用できます。
エクセルで受注管理を行うデメリット・注意点
エクセルで受注管理を行う際は、次のようなデメリット・注意点があることも理解しておきましょう。
- 複数人での同時編集が難しい
- ファイル管理が煩雑になりがち
- データ量が増えると処理速度が落ちる
- スマートフォンやタブレットで操作しづらい
複数人での同時編集が難しい
エクセルは、基本的に1つのファイルを1人のユーザーが使用することを前提に設計されているため、複数人での管理には向いていない点に注意が必要です。
ブック共有や共同編集機能を使用することで、ファイルの共有自体は可能ですが、ブック共有は一部の機能に制限がかかります。また、共同編集は特定のバージョン以降(Excel 2019 以降)のみで使用できるもので、古いバージョンのエクセルには対応していません。
ファイル管理が煩雑になりがち
エクセルは、ファイルの変更履歴が管理しづらい点もデメリットといえます。
情報を更新するたびにファイルを開き、特定の箇所のみを変更する運用が基本ですが、通常、誰がいつどのような変更を加えたかを特定するのは難しくなります。ブックの共有機能を利用している場合は、変更履歴を記録する機能を利用できますが、前述の通り、エクセルのバージョンによっては対応していません。
定期的にファイルのバックアップを取っておくことが基本的な対応になりますが、ファイルが増えてくると、情報をさかのぼるのも手間がかかります。運用ルールを決めて、担当者全員で遵守することが重要です。
データ量が増えると処理速度が落ちる
ファイル内のデータ量が増えると、処理速度が落ちて使いづらくなります。大量の受注データを扱う場合や、複雑な関数やマクロを組む際は、特にファイルの動作が重くなることが多いので注意が必要です。
ファイルごとのデータ容量を抑えるには、複数のファイルで管理する方法が有効ですが、管理の手間が増える点に注意しなければなりません。
スマートフォンやタブレットで操作しづらい
エクセルにはモバイルアプリがあり、スマートフォンやタブレットからアクセス自体は可能ですが、セルが小さく表示され、操作や閲覧がしづらくなります。
作業効率が落ちたり、誤入力の原因になったりするため、外出先で使用中に不便だと感じた場合は、モバイル対応のSFA(営業支援システム)などの専用ツールの導入を検討すると良いでしょう。
エクセルで効率的な受注管理をしよう
エクセルで受注管理表を作ると、受注管理の業務を効率化できます。必要な項目を設定したうえで関数・テーブル書式設定などの機能を活用し、入力を効率化しましょう。ファイルの命名規則や明確な運用ルールを定めることも大切です。
一方で、エクセルは複数人での同時編集が難しく、スマートフォンで使いづらいなどのデメリットもあります。エクセルによる受注管理は、顧客数や営業担当者の数が多い場合も煩雑になるため、専用のツールの導入を検討すると良いでしょう。
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