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ASCII Power Review 第287回

フィルム1本を撮り終わって現像するまで写りが見られないのがステキでした!!

写真好きに人気沸騰のフィルムカメラ型デジカメ=富士フイルム「X half」実写レビュー

2025年06月03日 08時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 富士フイルムからコンパクトデジカメ「X half」が発表された。撮像素子を縦に配置し、銀塩時代のハーフカメラのように縦位置写真を撮影できるのが特徴だ。

 これまでありそうでなかったスタイルのカメラで気なるマニアも多いはず。富士フイルムから試用機を借りたので試してみた。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ボディーカラーはシルバー、チャコールシルバー、ブラックの3種類を用意(写真はチャコールシルバー)。6月下旬発売予定で、予想価格は11万8800円。

ハーフ判カメラではない
ハーフサイズ型デジカメだ

 

 撮像素子のサイズは1インチ(13.3×8.8mm)と、さすがに銀塩フィルムのハーフサイズ(24×17~18mm)よりは小さいものの、その分ボディーはコンパクト。手のひらに収まるほどのサイズ感だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ボディーサイズは105.8×64.3×45.8mm、メディアバッテリー込みの重量は約240g。

 材質はプラスチックだが、無駄のないシンプルなデザインのおかげか、思いのほか高級感があるように錯覚される。

富士フイルム「X half」実機レビュー

上面に施した製品名の刻印や、底面のシンプルさなどデザインはなかなか美しい。

 上面には電源スイッチと露出補正ダイヤル、フレーム切り換えレバーがある。シャッターボタンにはネジが切ってあるが、レリーズボタンのみでレリーズケーブルの使用できない。シュー部も接点のないコールドシューなので外部ストロボの使用もできない。その代わりに前面にLEDフラッシュを内蔵している。

富士フイルム「X half」実機レビュー

電源スイッチをONにするとレバーが引きあがる。銀塩時代を知るマニアにはたまらない動作だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

装着アクセサリーが限られるコールドシューだが、デザイン的にはやはりシュー部があったほうがカッコイイ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

LEDフラッシュは静止画時では瞬間点灯、動画時には常時点灯になる。

 背面は縦位置で配置された液晶画面や銀塩カメラのフィルム窓のようなサブ液晶が個性的だ。ボタン類は静止画/動画の切換スイッチと再生ボタンのみ。主な操作はタッチパネルでおこない液晶画面を上下左右にスワイプするとメニュー項目が表示され、セットアップやフィルター選択など画面では左側のサブ液晶と合わせて操作する。初めは少し戸惑うが、それほど多機能ではないのですぐに慣れるだろう。

富士フイルム「X half」実機レビュー

背面もボタン類が少ないこともあり、銀塩のレンジファインダーカメラのようなデザインだ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

背面液晶を上にスワイプすると撮影時設定が、右ではフィルムシミュレーションとフィルターの切換、左はセットアップ、下ではスマホとのペアリングやフィルムカメラモードが表示される。

富士フイルム「X half」実機レビュー

サブ液晶ではフィルムシミュレーションやフィルター、セットアップメニューなどの選択がおこなえる。

 当然光学ファインダーも縦位置で、情報表示やパララックス補正など一切ない素通しのガラス窓で視度補正も無し。アイポイントが短めで、かなり眼を近づけないと全画面は見通せない。銀塩カメラの曖昧さを楽しむと割り切ったほうがいいだろう。

富士フイルム「X half」実機レビュー

光学ファインダーなのにアイセンサーも備え、覗くと背面液晶が消灯するのが新鮮。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ファインダー内を撮影しようとしたが、アイポイントが短いせいで全画面を写せてはいない。

 端子類は充電や画像転送とおこなうUSB-C一つのみ。バッテリーは「X100Ⅵ」や「X-M5」などと同じ「NP-W126S」で公称撮影可能枚数は880枚だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

側面にはType-C(2.0)とLEDフラッシュのスイッチがある。

富士フイルム「X half」実機レビュー

メディアとバッテリーは底面に同室。SDはUHS-1のみ対応。

ハーフサイズカメラなので
縦位置写真を撮る

 

 前述のとおり撮像素子は1インチ(13.3×8.8mm)で比率は3:2だが、記録される写真は4864×3648ドット(静止画の最大解像度時)の4:3になる。これはフィルムのハーフサイズの比率に合わせたからだろうか。ファイルはJPEGのみでRAWでの記録はできない。

 レンズは10.8mmF2.8で35mm換算では約32mm相当。使い切りフィルムカメラ「写ルンです」と同じらしい(知らんかった)。またレンズ周りには絞りとフォーカスのリングを備える。このあたりは富士フイルムらしいアナログ操作へのこだわりだろう。

富士フイルム「X half」実機レビュー

絞りリングには取っ手があるので小振りなレンズでも操作はしやすい。

 画質的にはシャープ感もあり画面全域で整った描写。ただ絞りF8くらいから回折の影響が感じられる。絞り値はF2.8~11で1EV刻みで、レンズの絞りリングでも中間絞りを設定することはできない。

富士フイルム「X half」実機レビュー

絞り開放で遠景を撮影。拡大してみてもなかなかシャープに写っている。絞りF2.8・シャッタースピード1/2000秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

絞り値別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左からF2.8・F4・F5.6・F8・F11。

 最短撮影距離はレンズ先端から約10cmまで近寄れる。ただ測距点範囲が広めでピント位置がずれることもあるのは御愛嬌だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

測距点は中央1点か6点のエリア選択が選べるが、いずれにしろ範囲は少し大雑把。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ほぼ最短撮影距離で撮影。それなりに背景はボケる。少し奥ピンになってしまった。絞りF2.8・シャッタースピード1/120秒・ISO200。

 感度はISO200から最高はISO12800まで設定が可能。ノイズ処理が強めでISO3200を超えると解像感が顕著になってくる。サイズの小さい1インチ撮像素子では致し方ないところだ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO200・ISO400・ISO800・ISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800。

フィルムカメラの楽しさを
デジタルで満喫できるのが新しい

 

 純粋な画質だけを見ると、トイデジカメ以上ハイエンドコンデジ未満というのが正直なところ。ただこのカメラの本筋は銀塩フィルムの楽しみ方を、デジタルで体験するために搭載された数々の機能や工夫にある。

 まず富士フイルムではお馴染みの「フィルムシミレーション」が10種類(ACROS/モノクロのYe・R・Gフィルター効果も含めると13種類)から選べる。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムシミュレーションの一覧。左上から順に、PROVIA/スタンダード、Velvia/ビビット、ASTIA/ソフト、クラシッククローム、REALA ACE、クラシックネガ、ノスタルジックネガ、ETERNA/シネマ、ACROS、セピア

 画像を加工する「フィルター」は全19種類。トイカメラ風やレトロなどの定番にくわえ、劣化して色調が偏ったような「期限切れフィルム」や、うっかり裏蓋を開け感光させてしまったような「ライトリーク」など、銀塩フィルム時代にあった失敗を、あえて再現したフィルターが搭載されているのがユニークだ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

期限切れフィルム(G・R・N)。絞りF2.8・シャッタースピード1/240秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ライトリーク。絞りF2.8・シャッタースピード1/2000秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

トイカメラ。絞りF2.8・シャッタースピード1/110秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ポップカラー。絞りF5.6・シャッタースピード1/1000秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

レトロ。絞りF5.6・シャッタースピード1/110秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

色ずれ。絞りF2.8・シャッタースピード1/2000秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ダイナミックトーン。絞りF5/6・シャッタースピード1/950秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

パートカラー(R)。絞りF5.6・シャッタースピード1/90秒・ISO200。

富士フイルム「X half」実機レビュー

ミラー。絞りF5.6・シャッタースピード1/50秒・ISO200。

 ただフィルムシミュレーションと「フィルター」を共用することはできない。この点は今度改良を求めたいところだ。

 なお画像に粒状感を付加する「グレンエフェクト」は「フィルムシミレーション」と「フィルター」いずれにも重ね掛けが可能。かつてモノクロフィルムで粗粒子現像に凝っていた身としては懐かしく感じる機能だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムシミュレーション「ACROS」に、グレンエフェクトは強、粒度は大で重ね掛けした作例。絞りF2.8・シャッタースピード1/1100秒・ISO200。

1本撮りきって現像するまで見えない
「フィルムカメラモード」が楽しい

 

 もっとも際立った機能なのが「フィルムカメラモード」だろう。開始すると設定した枚数を撮り終わるまではライブビューは表示されず光学ファインダーで撮影することになり、撮影した画像の確認もできない。また一枚撮るたびに「フレーム切り換えレバー」で巻き上げ動作をする必要もあり、まさに銀塩フィルムカメラと同様に撮り心地を再現している。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムカメラモードではフィルムシミュレーションやフィルターは途中で変えることができないのであらかじめ設定しておく。次に液晶画面を下にスワイプしてフィルムカメラモードをタップ、OKを押して設定画面に進む。なおサブ液晶のダブルタップや、SDや電池を抜くことで中断することはできる。

富士フイルム「X half」実機レビュー

設定画面で撮影枚数や日付のオンオフ、撮影モード(オートと絞り優先しか選べないもよう)を選択して始める。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムカメラモードで撮影中の画面。撮影枚数は上段のカウンターに表示される。AF/MFの切換や日付のオンオフは途中でも変更できる。

富士フイルム「X half」実機レビュー

設定枚数を撮り終えるとカウンターが巻き戻り終了になる。

 撮り終わってからもカメラ本体では画像は確認できず、専用のスマホアプリ「X half」で現像処理をおこなう。試してみると結構な手間がかかったが、銀塩フィルム時代はいつもこのような作業を行っていたなと思い出し、これまた懐かしく感じた。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムカメラモード撮影後にスマホアプリ「X half」で接続すると、一連の撮影がフィルムとしてまとめられている。

富士フイルム「X half」実機レビュー

フィルムを選択して現像処理をおこなうと、まずはネガの像が現れて、その後反転して通常の写真に変わってく。まさに銀塩の現像処理を再現した工夫だ。

富士フイルム「X half」実機レビュー

現像後はアプリ内ギャラリーにくわえ、カメラ内のメディアにも同時保存される。撮影画像を一覧にしたコンタクトシートが作成されるのも面白い。

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