エージェントとの「ロープレ機能」も2025年内に国内展開
24時間365日、見込み客を育成 Salesforceの「AIエージェント」で商談は増やせるか?
2025年06月06日 11時15分更新
11年間蓄積した営業データをAIエージェントに活かす
ここまで紹介したAgentforce for Salesの機能は、セールスフォース自身も活用しており、既に、80万件以上のリードや取引をエージェントが対応しているという。
そして国内では、中堅中小企業のM&A仲介を手掛ける日本M&Aセンターが、PoCを開始している。同社は、セールスフォースを11年前から活用しており、M&A仲介で重要なマッチングのために、データ活用できる環境を整えてきた。
同社がAIを活用する背景には、M&A市場の変化がある。中小企業経営者の3分の1が70歳以上であり、休廃業・解散する企業は年々増加。その半数が黒字廃業という状況だ。日本M&Aセンターの代表取締役社長である竹内直樹氏は、「大半の企業に継承者がいないのが、今の日本の大きな課題」と説明する。
国もこの問題を解決すべく、助成金を展開するほか、M&A事業者をサポートしてきた。その結果、10年前に30社程度だったM&A仲介業者が、今では700社にまで膨れ上がっている。「経営者には山のようなDMが届くなど、情報過多の時代になった。数が増えることで、モラルも低下している」と竹内氏。
こういった背景の中、同社は、「新規アポイント」の取得率に悩んでいる。新規アポ取得率は、2023年度の3.4%から1年で1.5%に減少、DM反響率も0.1%から0.01%まで落ちた。そんな中、同社が見出した勝ち筋が、接触チャネル数を重ね、見込み客を育成するナーチャリングだ。接触チャネル数が2回の顧客(2.6%)と比べ、3回の顧客(5.3%)は、受託率が2.6倍になることが分かったからだ。
このナーチャリングのために、Agentforce for SalesのPoCを始めている。AIエージェントが活用するデータも充分に蓄積されている状況だ。「いよいよデータを蓄積してきた会社が勝てる時代になった」(竹内氏)
PoCを進めるのは、顧客とのファーストコンタクトの領域だ。ポイントは、業界のモラルが低下しているのに配慮して、AIエージェントであることをオープンにすることだ。エージェントは、過去のヒヤリング情報からメールの文面を作成、顧客属性にあわせたタッチポイントを提供する。同社は、6月末までの結果をみて、今後の利用を検討していく予定だ。
竹内氏は、「蓄積してきたデータに、30年超のノウハウを掛け合わせて、それをAgentforceが活かすことで、この情報過多の時代に適切な情報を届けていきたい」と展望を語った。
